AI に株価を予測させて 7 か月、測ったら「入力の言い換え」だった

著者: なぎゆー公開日: 2026-10-02読了目安: 約 8 分
カテゴリ:開発スタック
OpenAILLMAI株価予測統計Claude Code

株に詳しくないから、自作の株価管理サービスに OpenAI の予測を入れて、自分の売買にも使っていた。データが溜まってから測ってみたら、上げ下げの一致率は 50.1%。出力の中身は「今日の値動きの言い換え」で、出典付きで信頼していた Web 検索も何も足していなかった。プロンプトを直せば、と粘りかけてから、AI を外して計算で確度を出す形に作り直すまでの記録。

株に詳しくないから、AI に任せた

自作の株価管理サービスを運用している。主役はチャートとアラートで、価格がしきい値をまたいだら通知が来る。日次のサマリーと AI の予測は、あとから足した機能だ。

AI 解析を入れたのは 2026 年 3 月。毎日の引け後に、銘柄ごとの当日の値動き(OHLCV)、過去 50 日分の日足、チャート画像、ローソク足パターンの判定結果を OpenAI の API に渡し、Web 検索ツールも使わせて、強気・中立・弱気の判断と理由を書かせていた。サポートレベルとレジスタンスレベルも AI に出させた。

期待していたのは、単純に予測だ。自分は株の動きの知識が疎い。でも AI に今持っているコンテキストを渡せば、それなりの精度が出るかもしれない、と思っていた。

実際、自分の売買にも使っていた。強気が出た銘柄はレジスタンスレベルにアラートを立てて買い、持ち株に弱気が出たらサポートレベルを見ながらアラートを足して売る。ただ経験が浅いので、サポートレベルで売ることになるのがよくあった。

「データが溜まったら測る」と決めて待った

5 月に、予測を翌営業日の終値で自動採点する仕組みを入れた。6 月には、AI に解かせる問いを採点の基準に揃えた。それまでの AI は、採点の基準(翌営業日の終値が ±0.5% のどこに入るか)を知らされないまま、漠然と強気・弱気を選んでいた。そこで「翌営業日のリターンを何 % と予測するか」と「確信度」を出させ、強気・中立・弱気はその数字から機械的に決める形にした。

効果は、新しい形の予測が溜まってから測ると決めた。結局、測ったのは約 3.5 か月後だった。

正直、期待していた。

測ったら、コイン投げだった

新しい形の予測で、採点が済んでいたのは 7,887 件。予測したリターンと実際のリターンで、上げ下げの向きが一致した割合は 50.1%(95% 信頼区間 48.1〜52.1%)。コイン投げと区別がつかない。

強気・弱気と言ったときの的中率は 41.0%。ただ、その期間に実際に 0.5% 以上上がった銘柄日は 40.5%、下がった銘柄日は 40.4% あった。何も考えずに言っても 4 割は当たる問いで、AI の上乗せは 1pt に届かない。

総合の的中率は、問いを揃えた前後で 27.5% から 37.0% に上がっていた。一見すると改善だが、これは「中立」と言う回数が減っただけだった。中立が当たるのは値動きが ±0.5% に収まった日だけで、それは全体の 2 割しかない。中立を減らせば、機械的に的中率は上がる。

データが壊れているとは思わなかった。株価の予測が難しいのは分かっていた。ただ、「AI でもそうなのか」という感じだった。

分析は Claude Code に任せた。データの品質、単純な指標の予測力、保有期間や確信度での絞り込み、銘柄間の比較、と観点を分けて、サブエージェントに並行して調べさせた。採点の仕組みは正しく動いていて、未来の情報が混ざってもいなかった。そのうえで、どの切り口でも予測力はゼロだった。

中身は、今日の値動きの言い換えだった

では AI は何を根拠に予測していたのか。予測したリターンのばらつきの約半分は、「当日のリターン」と「買い・売りパターンの合致数」だけで説明できた。当日の値動きと予測の向きは、80% の銘柄日で一致していた。

つまり AI は、「今日上がったから明日も上がりそう」を、もっともらしい文章を添えて言っていた。確信度は 0.45 付近に固まっていて、実際の当たりやすさより 10〜13pt 高めに出ていた。確信度が高いときほど当たる、という関係もなかった。

思い返すと、売買のときに見ていたサポートレベルとレジスタンスレベルも、AI が出した値だった。AI が引いた線で売っていたことになる。

一番意外だったのは Web 検索

一番意外だったのは、Web 検索だった。

AI の出力には、根拠として日銀の金融政策のページや企業の IR ページの URL が付いていた。実際の商品名も出てきた。それっぽい出力をしていると思っていたし、信頼してしまっていた。

ところが、予測のうち「当日の値動きとパターン数では説明できない部分」、つまり Web 検索やチャート画像から来ているはずの部分を切り出して調べても、翌日のリターンとの関係はゼロだった。出典付きの文章は、予測には何も足していなかった。

そしてコストはかかっていた。OpenAI の API は従量課金で、残高が一定額を切ると自動でチャージされる設定にしている。その通知を見るたびに、削りたいとは思っていた。8 月の 25 日間で OpenAI 全体の請求は約 131 ドル。そのうち約 60 ドルがこのサービスで、Web 検索はツールの呼び出し 1 回ごとに課金される。

プロンプトを直せば、とまず思った

最初の反応は、「諦めろってこと?」だった。まだスタートラインに立てていないだけなら、プロンプトやデータの渡し方を工夫して、スタートラインに立てるようにするのが先ではないか。

ただ、分析の結果がそれを否定していた。AI が言い換えていた元の情報、つまり当日の値動き、ギャップ、直近の勢い、パターンの合致数など 43 個の指標を直接調べても、翌日のリターンを当てる力はなかった。期間を前半と後半に分けて、どちらでも効いていた指標は 1 つもない。渡している情報に答えが入っていない以上、読ませ方を変えても出てくるものは同じだ。

それでも、何を渡すか、何を問うかを変えれば当たるのでは、と探索は続けた。そこで見えてきたのは、AI ではなく単純な計算のほうだった。

  • 以前の形式で AI がまれに出していた「強い強気」には、少しだけ優位性があるように見えていた。でも AI を使わない「当日 +3% 以上の銘柄」のほうが強かった。中身は 4〜5 月の半導体株の上昇に乗っていただけで、8 月には逆の結果になっていた。
  • 買いパターンが 2 つ以上同時に合致した銘柄日は、翌日に市場平均を 0.89pt 上回っていた。7 か月中 6 か月でプラスだった。パターン 1 つだけでは、ほぼゼロ。ただし、たくさん試した中の 1 つなので、偶然の可能性はまだ消えていない。
  • 値動きの大きさは、直近 5 日の値幅や当日の値幅から計算するだけで、ある程度予測できた。AI が出していた値動きの大きさは、その焼き直しだった。

予測の精度が実は半々くらいだったこともある。でもそれ以上に、計算のほうがいい精度のことがある、というのが大きかった。AI 予測を頑張ろうとしていること自体が、間違いな気がしてきた。

畳むか、作り直すか

機能ごと畳むことも、最初はよぎった。

でもこのサービスの肝はアラートとチャートで、結構作り込んできた。サマリーと予測は、もともとなかった機能だ。畳むなら予測の部分だけでいいし、予測の部分も、計算でなら作り直せそうだった。

積み上げてきた採点の仕組みや AI の改善計画を捨てることに、抵抗はあった。それでも、コストのことがあったので、安堵の気持ちもあった。

作り直した形はこうだ。

  • AI(OpenAI と Web 検索)は外す。
  • 当日までの値動きだけから機械的に計算できる「判断軸」を並べる。ローソク足パターンそれぞれ、パターンの合致数、値動きの大きさなどだ。
  • 軸ごとに、翌営業日の結果で成績を記録し続ける。その成績で重みを付けて、「明日、市場平均を上回る確率」「明日、普段より荒れる確率」を出す。
  • 重みは、その日より前のデータだけで決める。件数の少ない軸の重みはゼロに寄せる。軸同士が似ているので単純な多数決にはしない。局面で当たり外れが変わるので、重みは直近の成績で更新し続ける。
  • 確率と一緒に、点灯した軸の内訳と、それぞれの軸の過去の成績を見せる。確率がどの軸から来ているかを、自分で確かめられるようにする。
  • 確率が基準に近いときは「中立」と控えめに出す。中立が多いこと自体を、「手がかりが少ない」という正しい情報として扱う。
  • 当たり具合は毎月の点検で確かめる。異常とみなす基準は、結果を見る前に決めておく。

AI の予測は、もっともらしい文章で「当たりそうな感じ」を出していた。新しい形は、当たらないときは当たらないと正直に出す。

まとめ

  • AI に予測させるなら、先に測る仕組みを置く。自分は AI を入れてから 2 か月後に採点を始め、結論が出るまでの 7 か月、それっぽさを信じて使っていた。
  • 出典の URL や固有名詞が付いた文章は信頼されやすい。でも、それと予測が当たるかどうかは別物だった。
  • 大事なのは、言い回しより何を渡すかだ。渡した情報に答えが入っていなければ、AI はそれを言い換えるだけになる。自分には、何を渡すべきかを選ぶ知識が足りなかった。
  • AI で予測するより、単純な計算のほうが当たる場面がある。計算なら、何がどれだけ効いているかも見せられる。
  • 誰でも高い精度で株価を当てられるなら、もうみんなやっている。

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